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理事長ご挨拶

学会ホームページにアクセスしてくださった皆様へ

 日本保険学会は1895年(明治28年)設立の「保険学会」を前身に、1940年(昭和15年)に設立されました。現在の学会員は約900名で、内訳は大学研究者200名、実務家700名になります。このような長い歴史と伝統を誇る日本保険学会の理事長に選出頂き、誠に光栄であるとともに、その重責を痛感しております。これまで以上に、理事、評議員、監事ならびに会員の皆様からのご指導とご協力を賜り、一意専心、学会運営に努める所存でおります。

 本学会は保険に関する研究と保険研究者相互の協力を促進し、かつ国内外の関係学会、関係団体との連絡および交流を図ることを目的としています。この目的を達成するために、主に以下の3つの活動を行っております

 その第1は大会と部会活動です。大会は毎年10月末頃に全国各地の大学で開催され、共通論題・シンポジウム・個別報告が実施されています。学会外から講師をお招きして、記念講演や招待講演を行うこともあります。共通論題やシンポジウムでは、大規模自然災害や少子高齢化などの保険理論と保険事業を取り巻く課題が取り上げられ、また事業適正化と契約者保護を目的とした保険規制・監督や関連する法規などが議論されます。法律や経済・商学などのバックボーンを有する大学研究者のみならず、実務家会員を含めて日本の保険学の先端的、かつ建設的な議論が交わされています。そのために現場から幅広い問題意識を得て、空理空論に陥ることなく、問題解決の糸口となる現実的手段や政策を提言できることになります。
 部会は、関東部会、関西部会そして九州部会の3つのブロックに分かれ、それぞれの地区において年2回から4回、報告会が開催されており、部会単位でシンポジウムを開催する場合もあります。部会報告は若手研究者にとって全国大会での報告に向けた登竜門ともなっています。

 第2が学会ジャーナルとしての『保険学雑誌』の発行です。『保険学雑誌』は日本保険学会の前身である「保険学会」の機関誌『月刊保険雑誌』をルーツとした、120年以上の歴史を有しています。主として大会や部会での報告が論文の形となって掲載されています。近年ではレフェリー制(査読制)を導入して、その質の維持に努めています。若手研究者や大学院生にとって査読制の有る雑誌への論文掲載が認められることは、研究レベルの高い評価と業績の積み上げにつながります。加えて、特集企画は保険をめぐる経済や社会の最新動向を取り上げ、各界からの『保険学雑誌』への興味を高めると同時に、本誌の価値をさらに向上させるものといえます。

 第3が海外交流の促進です。韓国保険学会とは毎年、双方の大会に報告者を派遣する形で交流を図っています。またAIDA(世界保険法学会)へは理事派遣、APRIA(アジア太平洋リスク保険学会)とは理事の推薦に加え、年次大会では日本保険学会会員による報告が数多く行われています。来年の夏には12年ぶりにAPRIAが日本で開催されます。これをひとつの契機に、若手研究者の海外の学会における報告や海外の学術雑誌への投稿を積極的に進めていきます。関連する国際学会との交流を深めながら、その成果を広く世界に向けて発信することが、一層重要になっています。主に若手研究者を対象に著書と論文の成果顕彰のために学会賞を創設したことも、研究水準の底上げとグローバルに活躍する次世代人材の育成を目指しています。

  現在はVUCA時代の様相が益々強くなっています。パンデミックや自然の猛威は日常生活と経済活動の視界を不透明なものとし、その行き先の不安感を高めています。こうした時代だからこそ正確な現状認識と明確な指針が不可欠です。これは人生100年時代の様々な生活リスクへ的確に対処する際にも妥当します。元来、世の中は不確実性に満ち溢れていますが、それが人々の生活や生産活動に対するリスクとして顕在化したときに、英知と勇気をもって立ち向かうことを続けてきました。またリスクの世界的な広がりの中では、各国の経験と英知を紡ぐネットワークがますます大事になります。ウィズコロナ、アフターコロナの新しい生活と生産様式(ニューノーマル)を切り開くためにも、保険とリスクマネジメントの学術的成果が求められています。日本保険学会には累々と受け継がれる成果を蓄積しながら、時代の要請に応える研究活動を展開する使命があります。こうした活動を支援し、その環境を整えることに努め、誠心誠意、職責を果たしてまいります。

理事長 石田成則(関西大学政策創造学部教授)