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理事長ご挨拶

学会ホームページにアクセスしてくださった皆様へ

 日本保険学会は、1895年(明治28年)設立の「保険学会」を前身に、1940年(昭和15年)に設立されました、日本の社会科学系学術研究学会の中でも、最も古い歴史と伝統を誇る学会の1つである日本保険学会の理事長に選出いただき、身に余る光栄であると同時に、責任の大きさをあらためて痛感致しております。理事、評議員、監事ならびに会員の皆様の温かいご支援とご協力を賜りながら、誠心誠意、学会運営に努める所存でございます。

 2018年は猛暑、豪雨、地震など大規模自然災害の脅威を改めて実感する一年となりました。また、「人生100年時代」と言われ、長生きリスクへの対応が急務となっています。これらの課題の多くが、保険による対応と結びつくものであり、特に少子化、高齢化時代における年金や医療保険制度の行方は、公保険と私保険との役割分担を含み、政策的課題と直結しています。また、近年AIIoTの急速な進展により、フィンテックやインシュアテックが台頭し、これらの最先端技術によりこれまでの枠組みでは考えられない保障/補償スキームを用いてより広範なリスクへの対応が進む反面、サイバーリスクの脅威が急激にましています。このような環境変化を背景に、保険に対する関心やその社会的意義はますます高まり、日本保険学会の研究活動とその成果への期待も拡大してきております。

 その一方、平成30年度科学研究費助成事業(科研費)で新たに導入された審査区分表では、「保険」の例示が「民事法学関連分野」と「商学関連分野」から削除され、「金融およびファイナンス関連」のみとなりました。明治以来の長い歴史を持つ保険研究・教育(ひいては学会)が大きな環境変化に直面し、存続・発展していくために変化が求められているのは確かです。これは欧米を中心とした世界的潮流とも言えます。

 日本保険学会は、時代の要請に応える研究、新しい理論や手法を切り拓く研究に傾注するとき活性化するとの認識で、学会活性化策に本格的に着手し始めたところです。

 本学会は、保険に関する研究と保険研究者相互の協力を促進し、かつ、国内外の関係学会、関係団体との連絡および交流を図ることを目的としています(会則2条)。この目的を達成するために、主に以下の3つの活動を行っております。

  第1が、大会と部会活動です。大会は、毎年10月、全国各地の大学で開催され、共通論題、シンポジウム、個別報告がその柱となります。プログラムを作成する大会企画委員会によりその内容や構成が決まりますが、学会内外から講師をお招きして、記念講演や招待講演が行わることもあります。シンポジウムや共通論題では、大規模自然災害や少子高齢化など、保険の直面している課題が取り上げられ、大学研究者のみならず、実務家を含めて日本の保険学の先端的な議論が交わされています。

 部会は、関東部会、関西部会そして九州部会の3つのブロックに分かれた活動であり、それぞれの地区において年2回から4回、報告会が開催されております。また、部会単位でシンポジウムを開催する場合もあります。部会報告は若手研究者にとっては全国大会での報告に向けた登竜門となっており、また研究者だけなく実務家会員からも多彩なテーマでの報告が行われ、それに対する有益な議論を交わして研究内容を一層練磨していきます。

 第2が、学会ジャーナルとしての『保険学雑誌』の発行です。『保険学雑誌』は日本保険学会の前身である「保険学会」の機関誌『月刊保険雑誌』をルーツとした120年以上の歴史を有しています。主として大会や部会での報告が論文の形となって掲載されますが、大会、部会と同様に保険学会の学問的水準を表すものであり、レフェリー制(査読制)が導入されており、質の維持に努めています。若手研究者や大学院生にとって、査読制の有る雑誌への論文掲載が認められることは、研究レベルの高い評価と業績の積み上げにつながります。また、特集企画は、保険をめぐる経済や社会の動向を取り上げ、各界の保険学雑誌への興味を高めると同時に、本誌の価値をさらに高めるものといえます。

 第3が、海外交流の一層の進展です。韓国保険学会とは毎年、双方の大会に報告者を派遣する形で交流を図っております。またAIDA(世界保険法学会)へは理事派遣、APRIA(アジア太平洋リスク保険学会)とは理事の推薦に加え、年次大会では日本保険学会会員による報告が増加しています。若手研究者の海外の学会における報告や海外の学術雑誌への投稿なども積極的に進めるとともに、今後もより多様な学会等との学術交流を深め、日本保険学会の国際的な地位のさらなる引き上げを目指していきます。

 現在、学会員は約900名で、内訳は大学研究者280名、実務家620名となっています。日本保険学会における議論の特徴は、法律および経済・商学系の大学研究者と、生保・損保さらに共済等多彩な実務家の協力によって醸成される、隣接分野の研究と実務を十分に理解した上での理論展開にあります。単なる空理空論ではなく、現実性をも考慮した理論の構築は、日本保険学会における学問的水準の世界的な評価につながっていると理解しています。これからも、学会活動を展開してゆく中で、保険実務家の方々とも学問的な関心を共有しながら、時機に応じたテーマを積極的に取り上げて、時代の要請に応えうる研究に邁進し、学会のさらなる発展に向けて努力する所存です。

あらためまして皆様のご支援、ご協力をお願い申し上げます。

理事長 中林真理子(明治大学教授)